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文・著作権 鈴木勝好(洋傘タイムズ)

Y O U G A S A * T I M E S * O N L I N E
◆◆◆昭和35年 洋傘ショー◆◆◆



洋傘がファッショングッズのひとつであることは、常識(?)の範囲と思いますが、
その点を業界が主張としてどれほどPRしてきたかは、疑問のするところでしょう。

マルコ産業(株)(現 サンマルコ梶jが、ファッションライターの大内順子さんを
アドバイザーに起用して、業界初の「洋傘ショー」を開いたのが昭和35年(1960)3
月30日のことです。(入江美樹は当時のトップモデルで、後に指揮者小澤征爾夫人に
なったと記憶しています)。
日本洋傘振興協議会がプレズ向けの「洋傘ショー」を主催したのは、それから10年
後、昭和45年(1970)のことです。それも2〜3回で途切れ、東京の洋傘組合主催の
ファッションショーが実現したのは昭和63年(1988)のことです。
(その後、'90〜'99と連続開催して中断)。


下記の新聞は、主催者名が出ていませんが、マルコ産業が上記ショーをアメリカ人向
けにややアレンジして発表したものと推察されます。

昭和35年6月25日には、皇女清宮貴子内親王(島津貴子さん)が洋傘業界を視察、マ
ルコ産業と丸○○○(現アイデアル)を訪問しています。
この年、カラーテレビ本放送開始(NHKほか8局)




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洋傘タイムズ  昭和35年10月1日付け

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日本洋傘ショー

  座間キャンプにて

    婦人将校に大もて




去る8月17日午後2時から神奈川県座間米軍キャンプ将校クラブで、米国婦人をモデル
とした洋傘ショーが華やかに開催された。
日本の洋傘業者が米軍関係のキャンプで洋傘ショーを開いたのはこれが初めて。

冷房完備の会場、将校クラブには米軍将校婦人約600名がつめかけていたが、やはり
米国の高級層といわれている婦人の集まりであるので着ている衣装も格別派手やかで
あった。正面のステージには洋傘が飾られ、軽くかなでるピアノのメロディーにのせ
てそこを降りて、観客の前を通るというのが、このショーの構成。

全24景のうちには雨傘あり、パラソルありの賑やかさ、雨傘にしても、雨傘と雨の
日に着るレインコートとのバランスを美しくみせる。バラの模様の洋傘に同系の雨
衣。モデルがモデルだけに日本人にはみられない立体感が現されていた。一方パラソ
ルは、夏の衣装とのアンサンブルを強く打ち出しワンピース、ブラウス等と同系のも
のが多く出品されていた。

モデルが、ステージ上から観客席に降りてゆっくりと洋傘をみせれば会場は拍手の
波、約1時間半で同ショーの幕を閉じた。
なお、ショーが終了してから別室で即売会を開いたが売れ行きは上々であった。
売れた品物をみてみると、パラソルは強いアクセントのある製品が非常に好まれ、手
元の金属製のもの(金色)は特に注文が殺到。雨傘では、長ものが好まれ、折りたた
みは売れていない。雨傘にしてもやはり自分のもっている衣装に合わせたものを買う
傾向は強いようである。この即売会では特に感じたことは、洋傘の生地、手元などの
サンプルを見て注文する婦人が多く、あまり既製のものは買わなかったという点であ
ろうが、注文洋傘はそれだけ価格の点においても高くなるが、自分のおしゃれのため
には価格は問題でないというのが彼女の考えのようだ。

某将校婦人談「今日の洋傘ショーは非常によかった。日本の洋傘は良いものがあると
聞いていたが、こんなに立派なものがあるとは思わなかった。米国本国にも洋傘の美
しいのはたくさんあるが、それよりも優れていると思う。
このような洋傘をデパート等でどしどし売り出せば、日本女性も私達と同じようにオ
シャレ品として買うと思う。
今日傘を買ったが、アメリカへ持ち帰り日本洋傘を友人に広く紹介したい。」



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 昭和35年4月1日  洋傘タイムズ

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大内順子さんの新作発表

  洋傘ショー好評

   雨の日を楽しむおしゃれ傘 いろいろ




雨・・・・雨・・・・雨・・・・の季節はもうすぐそばにきています。
長い雨続きの日はとかく心がゆううつになるものです。このゆううつさを忘れさせ
「私は雨の日が待ち遠しい」という気持ちにさせてくれるのは、何といってもおしゃ
れの傘でしょう。雨の日に静かに囁くオルゴールの音。優雅な香おりを漂わせる香水
の香り・・・・・・。このように、雨にさす洋傘、太陽の盾となるパラソルを実用品
からアクセサリーに移行させ、持って楽しく、嬉しい洋傘にという主題のもとに、こ
のほど洋傘業界初めての洋傘ショーが開かれ好評を博しました。


オルゴール付デリカ洋傘、香りの漂うラブミーアンブレラなどを発売しているマルコ
産業KKでは、既報の通り、もとファッションモデル、いまファッションライターとし
て活躍している大内順子さんを専属デザイナーとして迎え洋傘を実用品からアクセサ
リーにしようと研究をしていましたが、その新作発表ともいうべき「洋傘ショー」が
3月30日午後1時半と3時半の2回に分け赤坂のプリンスホテルで開かれました。
招待された人々は、一流文化人を始め、内外報道関係者多数で2回とも場内は立すい
の余地もないほどになっていました。正面には美しい黒と白のセットが置かれてい
て、そこから中央へ花道がつながり花道の左右に招待者の座席がもうけられていまし
た。

舞台右に設けられた解説席のメリー大須賀さんの解説によりシャンソンを交えた全2
4景が開幕しました。入江美樹、荒木千枝子、香山利子さんなど7人の一流ファッ
ションモデルが、舞台左側のバンドのかなでるメロディーに乗せて新作洋傘を持って
舞台に出れば、報道陣のフラッシュがたかれ、女性の観客の中にはため息さえ聞かれ
るようでした。

主な景を紹介しましょう。

雨の並木路=====ジュリー高岡さんの歌う歌に乗せて2人のモデル登場。黒のド
レスに真白の傘。白い傘に白い洋服。反対色の美しさと、アンサンブルの美しさを現
していました。(モデルは木村富子、荒木千枝子)

一年生=====美しい奥様役のモデルと可れんな子どものモデル。大側のチェック
をあしらった、同色のトッパーコートを着たママ。ママと同じコートを着て、同色の
子ども傘を持った子ども。新しい感じの出せる面白い試みといえましょう。


ロマンティックな夢=====傘をさすと自然と香水のにおいが流れてくる。雨の日
にはロマンティックな香りとともにといういわゆるラブミーアンブレラ(モデル 入
江美樹)

ツートンカラー=====クリームと黄色、ローズとピンクの2色の組合せた生地を
一コマずつはり合わせたもので、かなり派手な感じが表現されていました。


バラ色の人生=====いわゆるオルゴール付デリカ洋傘の登場。場内マイクを通じ
て美しいメロディーが流れ、ジュリー高岡さんの歌が入るというもの。


ラジオを聞きながら=====これは手元の部分にトランジスターラジオを取り付け
てあり、ラジオを聞きながら雨の日を楽しくするというものでした。


傘は大内順子さん、着物は宮内祐さんのデザインによるものだけに雨に日でもかなり
楽しめる傘と洋服が発表されました。
特に1点だけの男子用傘にしても、表面は黒でも、ウラ側はハデな縞子模様になって
いますが、ダスターコートもこれを着用すると一寸面白い感じになるようです。
手元も従来の手元よりもしゃれた感じのものが多く、ハイカラさんの景などはかなり
長目の手元を使用し、洋傘骨、中棒、手元も金色を使用しています。

またムーンライトパラソルなどは雨の夜、うすい明かりにもくっきりと傘にあしらっ
た蛍光色の花模様が浮き出るのも新しいアイデアのようです。

このおしゃれの洋傘ショーをみると、傘とドレス、傘と持ち物が同系色に創り出され
たり、全然反対にされたりしていますが、なんといっても、傘は顔に近くまず第一に
おしゃれをするのに改良する部分だということを打ち出し、服飾で傘をもたないとア
ンサンブルがとれないというようにできていまして、これらの新しい製品は洋傘業界
に大きなアイデア的改革をもたらすものといえましょう




洋傘ショースタッフ

 企画・制作  マルコ産業
 企画部    島影 礼一
 構成・演出  A.カワモト
 照明     竜前 正夫
 装置     銭 屋
 音響     柄沢 琢也
 音楽     渡辺 辰夫
 衣装     宮内 裕






ショーが終わってから大内順子さんは記者に次のように語ってくださいました。


「雨の日に着るコートや、ブーツがおしゃれになってきていますが、傘はまだその境
に達していないようです。顔にもっとも近い傘をおしゃれにする必要があることを感
じていろいろな傘を作ってみました。雨の日の憂鬱さが、新しい試みの傘によって取
り除ければよいと思います。また今ひとつのねらいとして、雨の日でない日にももっ
てもおかしくない傘も出品してみました。」













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