backhome

文・著作権 鈴木勝好(洋傘タイムズ)

Y O U G A S A * T I M E S * O N L I N E
◆◆◆=秋の気象寸見=◆◆◆





◇秋は陰陽の妙
 秋は陰と陽との両面をはっきり見せる季節である。
 陰は、9月中旬から10月中頃までにみられる「秋雨(あきさめ)」であり、それが
長雨になると、「秋霖(しゅうりん)」とか「秋黴入(あきついり)」と言われる
。(今年の9月は、中旬を過ぎても、秋というよりは、1ヶ月遅れの夏といった感じ
だが・・・・・)。

 秋雨や田上のすすき二穂三穂   (飯田蛇笏)

それが過ぎると、「天高く馬肥ゆる・・・・・」に代表される天候がやってくる。即
ち、陽へ転ず。

 秋天にわれが ぐんぐん ぐんぐんと  (高浜虚子)

そして、晩秋に入って、再び陰の様相を帯びて秋時雨(あきしぐれ)が降る。

 斯の如く秋の時雨に濡れ申す   (高浜虚子)

 秋時雨女の傘をとりあへず     (山口青邨)


なお、秋を代表する植物の一つに萩がある。

 雲間より日ざし萩より雨雫    (今橋真理子)

 上句は、平成14年9月23日付の『朝日俳壇』に掲載されていた投稿句。秋らしいすっ
きりした空の青さが見えてくる秀句といえよう。




◇変わり易いは・・・・・

 秋の空は晴れやかだが、一方で「変わり易い」ものにも例えられる。「男心と秋の
空」また「女心と秋の空」とも。果たして、男心と女心と、どちらがより変わり易い
のかは判定し難いが、男にとっては女心が、女にとっては男心が、となるのかもしれ
ない。
あの小林一茶は。自分の心の移ろい易さを嘆じて、「恥しやおれが心と秋の空」と詠
んでいる。

秋になると、大陸の移動性高気圧が日本列島に移動して天気がよくなるが、それが通
過すると低気圧が来て雨になる。これが一週間ぐらいの周期になる。また、太平洋か
らの暖気と大陸からの冷気が接触して不安定な前線をつくるため、天気が変わり易く
なる。これが「変わり易い秋の空」の原因である。こうした状態も、10月中旬あたり
から、落着いてくるのが普通である。





◇ひと雨1度

秋の気温は、ひと雨降るごとに1度下がるといわれ、それが「ひと雨1度」である。
 10月から11月にかけて、移動性の高気圧と低気圧がほぼ1週間の周期で交互に通過
する。
従って、平均すると1週間に1度位の割合で雨が降ることになる。10月中旬から11月
中旬まで、半旬毎の気温の平年値は次のようになっている。


                札幌       東京      福岡  (℃)

10月11〜15日  11.9      18.6     19.3
  16〜20日  10.8      17.8     18.3
  21〜25日     9.8      16.9     17.3
  26〜31日     8.7      16.1     16.4

11月1〜5日       7.5      15.3     15.7
  6〜10日      6.2      14.4     15.1
  11〜15日     4.9      13.6     14.1
  16〜20日     3.9      12.6     12.9


              ――――――理科年表より――――――

10月〜11月に10mm以上降水量のある日数合計(平年値)は、札幌=6.4日、東京=7.2
日、福岡=5.4日となっている。これらの数値からも、概ね「ひと雨1度」は、ほぼ妥
当そうである。





◇雨言葉から
 雨の文字が入った言葉からピックアップ。


[雨降りの太鼓] 
雨の日は太鼓の鳴りが悪いことから、[胴鳴らない]を[どうにもならない]にかけ
たシャレ。

[雨降りの鶏]
鶏の仕草から、ちょっと首をかしげて考え込んでいる様子のたとえ。また、しょんぼ
りしてやつれている様にいうことも。

[雨にしょおれし海棠(かいどう)の花]
美人の憂い顔をいう。

[雨を帯びたる桃李(桃桜・花)]
美人の形容。

[雨傘番組]
最近はあまり聞かないが、テレビやラジオで、野球などの実況中継が天候の都合で中
止された場合、代りに放送される番組。

[雨車(あまぐるま)]
歌舞伎で、雨の降る音を表現するために用いる小道具。糸繰車に似ていて、紙を張っ
た中に小豆や砂利を入れ、取っ手を回して音をだす。

[雨障(あまざわり)]
雨に降りこめられて、外出しないこと。あまつつみ、ともいう。

[雨車軸]
大粒の雨が激しく降ること。また、そのさま、をいう。

[雨間(あまあい)]
雨が一時やんでいる間。

[雨は花の父母]
雨は花を養い育てる父母。

[雨晴れて傘(笠)忘る]
困難が去ると、その時受けた思いをつい忘れてしまう。









B A C K