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文・著作権 鈴木勝好(洋傘タイムズ)

Y O U G A S A * T I M E S * O N L I N E
干支(戌歳いぬどし)で辿る
洋傘の歩み(その2)





◆〔昭和9(1934)年・甲戌(きのえいぬ)〕・・・・・年間総傘936万本
 日本は前年に国際連盟を脱退し、軍拡政策が進められる世情となる。松田文相が 「家庭でのパパ・ママ呼称」を非難する発言。初のプロ野球チーム・大日本東京  野球倶楽部が発足。選手に沢村栄治、スタルヒン、水原茂、三原脩などがいた。  翌々年に米国へ遠征し、100試合以上を戦い、勝率6割8分7厘の成績を納める。  〈洋傘関連〉  国内製造業は概ね順調に進展し、この年の生産量は936万本で(和傘は2,500〜  2,600万本)、明治31年(戊戌(つちのえいぬ))当時の2.6倍ほど。東京の百貨  店(伊勢丹)で二段式折りたたみ傘を発売。前年あたりから、甲州織の婦人用  「晴雨兼用傘生地」が製織され、産地の名声を高めている。
◆〔昭和21(1946)年・丙戌(ひのえいぬ)〕  資材統制下で価格急騰。
 戦後二年目。現人神(あらひとがみ)であった天皇が「人間宣言」を発表。新し  い日本国憲法が公布され、極東軍事裁判が開廷、戦後初の衆議院総選挙が実施さ  れた。NHKラジオに聴取者参加番組『街頭録音』が登場、5月1日の第一回目  テーマは「あなたはどうして食べていますか」であった。  〈洋傘関連〉  洋傘生産資材の統制が(戦時中より)継統されており、日本洋傘統制組合が傘生  地の一手買取と割当て、また製品の買い取りと販売を行っていた。軍需産業から  の転用でジュラルミン製の中棒や手元が多く使われた。年間生産量は51万3千本ほ  どで、昭和9年の僅か5%程度にすぎなかった。  反面で需要があるため、統制令に依るこの年の公定価格は男物が60円、女物56円  50銭で昭和19年比で約5倍の急騰ぶりであった。闇市の値段になると、東京上野で  蝙蝠傘が220円(公定価格の3.7倍)、番傘95円、銀座の闇市でパラソルが290円と  いった具合い。(洋傘の公定価格は昭和24年7月末に廃止される)
 ◆〔昭和33年(1958)年・戊戌(つちのえいぬ)〕    米国で洋傘骨の輸入抑止運動。
 4月1日に売春防止法が施行され、いわゆる「赤線」の灯が消える。12月に1万円札  発行。当時の大学卒業者初任給は1万2〜3千円であった。皇太子(現天皇)妃内  定の報道から「ミッチーブーム」が起こる。ロカビリー旋風。  〈洋傘関連〉  前年に米国の洋傘骨業界が日本からの洋傘骨に対する輸入関税率の引き上げを提  訴したことから、日本の業者団体は8月から数量協定を実施した。また、輸出検査  法の施行に伴い、輸出用洋傘が検査指定品目となる。日本輸出洋傘工業組合、  日本洋傘骨工業組合連合会が発足。昭和33年度の輸出実績は、洋傘が990万本、  洋傘骨361万本。
 ◆〔昭和45(1970)年・庚戌(かのえいぬ)〕    洋傘の生産・需要・輸出で「三冠王」
 東京の銀座・新宿・池袋・浅草で、初の「歩行者天国」実施。予想を超える78  万人の人出。万国博覧会開催。自動販売機100万台突破。総売上高4600億円に。  カップラーメン登場。  〈洋傘関連〉  年間の国内製傘約7,000万本。洋傘輸出1,500万本超。国内需要約5,000万本で  洋傘における「世界の三冠王」時代。ミス・インターナショナル世界大会の出  場者による東京パレードで48ヵ国代表が傘を持って台車行進する(東京洋傘協  会提供)。日本洋傘振興協議会が「太陽の詩(うた)・雨の詩(うた)」を  テーマにプレス向けのショー開催。(4月13日・ホテルニューオータニ)。
 ◆〔昭和57(1982)年・壬戌(みずのえいぬ)〕  トップレス式ミニ傘が大人気。
 食糧管理法の改正により、1月25日以降『米穀通帳』廃止となる。昭和16年4月  から始められ、米の配給だけでなく身分証明書代わりにもなっていた。流行語  =るんるん、ネクラ、ほとんど病気、逆噴射など。  〈洋傘関連〉  トップレス式ミニ傘が大人気となり、NHK総合テレビ『ニュースセンター9時』  (1月11日)で、ヒット商品特集の話題に採り上げる。日本トップレス協会が  「母の日」プレゼント用としてミニ傘のテレビCMを放映。  合成樹脂製の洋傘骨が開発される。傘の石突による殺傷事件が発生、テレビ・  新聞等に広く報道されて社会問題化。昭和57年版『中小企業白書』が、日本洋傘  骨工業所有権協会の権利共同活用事業を掲載紹介する。
◆ 〔平成6(1994)年・甲戌(きのえいぬ)〕・・・・・輸入洋傘が1億本に。
 細川内閣総辞職から羽田少数党連立内閣→自・さ・社連立村山内閣発足と政局が  変転。カラ梅雨と夏の連続熱夜記録。価格破壊、同情するなら金をくれ、すった  もんだがありました・・・・などの流行語。  〈洋傘関連〉  洋傘の日本工業規格J I S - S -4020」が制定(10月3日・官報公示)されるも、  事実上は運用されることなく立ち消え状態に。雨傘の需要低迷下で輸入増続く。  輸入洋傘は約1億本(9,999万6千本)に達し、国内実需要を大きく上回る。国内製  傘量は800万弱に低下。世界一の洋傘輸入大国に・・・・・パラソル市況は良好。

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