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文・著作権 鈴木勝好(洋傘タイムズ)

Y O U G A S A * T I M E S * O N L I N E
◆◆◆冬の雨◆◆◆



「四季」(春夏秋冬)の区分は・・・・?

日本の季候には春夏秋冬(四季)の変化があって、季節ごとに味わい深い情趣を現出
し、生活文化を豊に彩ってくれる。
一般に四季は1年12ヶ月を4等分した3ヶ月を一季として数えられている。
 現行の陽暦では、次のようになる。
   春・・・2月〜4月   夏・・・5月〜7月  
   秋・・・8月〜10月   冬・・・11月〜1月
 なお、陰暦では、次のようになっている。
   春・・・1月〜3月   夏・・・4月〜6月  
   秋・・・7月〜9月    冬・・・10月〜12月

 陰暦の区分けはさておいても、陽暦での区分も日常的に実感する春・夏・秋・冬と
は微妙なズレが生じる。南北に長い日本列島を考慮しても(平均化して)、2月を春
というのは早い気もするし、8月は夏の真っ盛りである。
 また、歳時記などでは次のような分け方をしている。
   春・・・立春(2月4日頃)〜立夏の前日(5月5日頃)まで
   夏・・・立夏(5月6日頃)〜立秋の前日(8月7日頃)まで
   秋・・・立秋(8月8日頃)〜立冬の前日(11月6日頃)まで
   冬・・・立冬(11月7日頃)〜立春の前日(2月3日頃)まで

 ※陰暦では、新年と立春がほぼ同時にきたことから、元日を「今朝の春」「今日の
春」などと詠った。
 月で分割するよりも歳時記の方がより実感に近づくものの、8月初旬から秋という
のは「ナットク」という訳にはいかない? 
 そこで、生活実感に近い四季として、江国滋氏は著書『きまぐれ歳時記』の中で次
のような区分けを提唱(?)している。
   春・・・3月〜4月   夏・・・5月〜8月
   秋・・・9月〜10月   冬・・・11月〜2月

 江国氏は、暮らしに適した季節は短く、厳しい(暮らしにくい)季節(夏・冬)は
長いと実感しているようであるが、これに賛同する人も多いのではにかと思われる。


【冬の雨】
 
 (イ)時雨(しぐれ)

 冬の雨を代表するのが「時雨(しぐれ)」。初冬から中頃にかけて、さっと降って
は上がり、時には断続的に降り続き、降ったかと思うと太陽が顔を出すなど趣があ
り、京都は時雨の名所といわれる。俳句で単に「時雨」といえbが冬の季題になり、
他は「春時雨」「秋時雨」と季語を入れて表わす。朝時雨、夕時雨、小夜時雨、村時
雨、片時雨などのバリエーションがある。
種田山頭火に「うしろすがたのしぐれてゆくか」という有名な句がある。

      鷺ぬれて鶴に日のさすしぐれかな  (谷口 蕪村)

      赤多き加賀友禅にしぐれ来る    (細見 綾子)


   ※時雨忌=俳人松尾芭蕉の忌日(=芭蕉忌)元禄7年(1694)陰暦10月12日、
茸中毒が因で大阪・御堂筋南久太郎町 花屋仁左衛門の裏座敷で死去。享年51歳


      時雨忌や林に入れば旅ごころ    (石田 波郷)



 (ロ)寒の雨
 
 一般に冬の雨といえば、何となく暗い感じであるが、冬の寒が緩んだ時に雨とな
る。気温が3〜4度以下になると、雨がしだいに雪に変わる。「寒の雨」は、寒の内に
降る雨をいう。

 
      武蔵野を横に降るなり冬の雨    (夏目 漱石)

      寒の雨芝生のなかにたまりけり   (久保田 万太郎)



 (ハ)御降り(おさがり)

 元日に降る雨(雪をいう場合も)を敬して「おさがり」という。三が日の間に降る
ものも含めていう。
   
     御降や竹深々と町のそら       (芥川 龍之介)

     お降りといへる言葉も美しく     (高の 素十)




  【 雪 】


 降る雪も雨に劣らず多様な風情を見せる。
 太宰治は生地を取材した作品『津軽』の冒頭に「津軽の雪」として、こな雪・つぶ
雪・わた雪・みぶ雪・かた雪・ざらめ雪・こほり雪・・・・・・の呼び名を献じてい
る。

 雪の結晶は六方形に代表されるところから「六花(むつのはな)」の美称もある。
また「雪月花」と言われるように伝統的な日本人の美意識の中で、雪な冬の景観を代
表しており、更に「五穀の精」「豊年の瑞兆」ともいわれてきた。降ったばかりの雪
が新雪(あらゆきとも)で、消えずに積もっていくと根雪になる。
 雪の降る様子から――小雪・粉雪・綿雪・牡丹雪・小米雪(こごめゆき)・細雪
(ささめゆき)・淡雪・沫雪・・・・・等。
 雪明り・雪の声・朝(夜)の雪・暮雪・雪の宿・雪晴(ゆきばれ)・雪見・・・・
・。
晴れていながら風に乗ってきた雪が舞うのを「風花(かざばな)」と美しく表現す
る。


     初雪や水仙の葉の撓む(たわむ)まで   (松尾 芭蕉)


     雪降れり時間の束の降るごとく      (石田 波郷)
  

     綿雪やしづかに時間舞ひはじむ      (森 澄雄)


     風花はすべてのものを図案化す      (高浜 虚子)



     今朝は初雪あゝ誰もいないのだ      ―朱鱗こと太宰治の句―


 

 降る雪の状態と色とりどりの傘との組み合わせは、雨とはまた違った独特な風趣が
感じられます。傘はどの季節にも名演出の効果を発揮するようです。






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